「勇者ビマ 天界へ赴く」は、バリのワヤンでは非常に有名な演目です。 この演目は、死と係わる一連の儀礼(ビドラ・ヤドニャ)の中で、使者の魂が天界へ召されることを願って上演されるため、 単なる娯楽的な演目ではなく、儀礼的な色彩の強い演目です。 また、マハバラタ物語の登場人物を用いていますが、インドに伝えられるマハーバーラタ物語の中にこの挿話はなく、 バリ版マハバラタ物語の演目の一つです。
◆善い人側の人形(スクリーン影側からみると左側から登場します)
ビマ:
パンダワ五兄弟の次男。
クンティが風神バユより授かった息子。
超人的な怪力を持ち、棍棒、拳闘に優れている。
◆悪い人側の人形(スクリーン影側からみると左側から登場します)
スラットマ:地獄の番人。
パンダワ一族のクンティは、二人の息子であるユディスティラとビマを呼び、亡くなった夫パンドゥと、もう一人の妻マドゥリが地獄で苦しんでいる
夢を見たことを涙ながらに語ります。
ビマはその話を聞いて、母クンティや兄弟とともに養父パンドゥと2人の兄弟の母マドゥリに会うために地獄へ向かうことを提案します。
ビマの体内に入った母と4人兄弟、そして2人の従者は地獄へと向かいます。
地獄の入り口にはスラットマという名の番人がいて、地獄にやってくる使者達に生前に犯した過ちや罪について聞き取りを行なっています。
その罪の深さにより、地獄にいる期間が決まるのです。
地獄の入り口にはさまざまな魂がやってきて、スラットマと面白おかしい会話が展開されます。
スラットマは突然地獄の入り口に現れたビマが生きた人間であることを知り、地獄に入ることを拒みます。
ところが、ビマが力ずくで通過したことから地獄の世界は大騒動。
番人たちとの戦いになり、最後は地獄を支配するヤマ神までがビマにことごとく退散させられます。
ビマの体から出たクンティとビマの兄弟は、地獄の奥底で父パンドゥとその妻マドゥリの魂と出会い、なぜ2人が地獄にいるのかを知ります。
父パンドゥは、自分たちの穢れた魂が浄化されるための唯一の方法は、天界に存在する聖水(ティルタ・アムリタ)で浄化されることだと語ります。
従者と共に天界へ向かったビマは、その入り口での静止を押し切り、神々の世界でウィシュヌ、ブラフマ、インドラなどの崇高なる神々と戦いを繰り返します。
最後にビマは、実父である風神のバユと出会い、聖水ティルタ・アムリタを請願しますが、それを拒絶されたことで、父子の激しい戦いとなり、
最後に父バユにより息子ビマは殺されてしまいます。
ビマの死に驚いたアチンティア神は、ビマだけでなく、この争いで亡くなったあらゆる命を生き返らせます。
そして、ビマの養父パンドゥとその妻マドゥリの強い想いを賞賛し、二人の魂を浄化するための聖水ティルタ・アムリタを授けます。