スタソーマ:
パスティナ国のマハケトゥ王の息子
悪鬼の襲来に悩まされていたハスティナ国のマハケトゥ王の息子として誕生したスタソーマは、仏(舎邪仏・大日如来)の転生でありました。
王はスタソーマに王子として世継ぎとなることを望みましたが、スタソーマは悟りを求めて国を離れ、瞑想のために須弥山(スメル山)にでかけます。
山中の庵でケサワという名の尊者に出会うと、尊者はスタソーマに対して、クプと呼ばれる大きな木の前に来たら、
傍に行かずに常に右に折れて迂回するようにと忠告をします。
そこには人喰いの悪鬼ガジャワクトラが潜んでいるからです。
しかし、スタソーマは尊者ケサワにこのように告げます。
「殺生はいけないことです。この私がガジャワクトラに不殺生を説きましょう。」
あえて大きなクプの木の傍に来たスタソーマは、像の姿をした神ガナ神から力を得て悪鬼ガジャワクトラに出会います。
そして、殺生がいかに愚かなことかを説きますが、その説得に怒ったガジャワクトラはスタソーマを殺そうとします。
しかし、スタソーマの不殺生の力にひれ伏したガジャワクトラは、二度と人喰いをしないことを誓い、共に須弥山を目指します。
スタソーマとガジャワクトラが須弥山へ向かう途中、突如、行く手を阻み、スタソーマを殺そうとする竜が現れます。
スタソーマはガジャワクトラと同様に、不殺生を説き伏せ、改心した竜を家来にして、共に須弥山へ向かう旅にでます。
あるとき、スタソーマは腹を空かせた雌虎が息子の虎を食べてしまおうとする場面に遭遇します。
これを見たスタソーマは、息子の虎の代わりに自分の命を捧げ落命します。
しかし、その死を悲しんだ神々はスタソーマに同情し、インドラ神が降臨して、スタソーマを生き返らせます。
虎の親子も家来としたスタソーマ一行は須弥山へと向かいます。
バリ島でもほとんど上演されない珠玉の秘話。
生きとし生けるものの命の尊さを諭し、あらゆる邪心に教えを説く、スタソーマの汚れなき行いを描きます。
誰も命を落とすことのない唯一のワヤン。
この物語はスタソーマ物語の後編「プルサダの改心」へと続きます。