Wayang Tunjuk 梅田一座

ワヤン(影絵人形芝居)について

  ワヤンとは・・・

ワヤン  インドネシアのバリ島とジャワ島にはワヤンという影絵芝居があり、ユネスコの無形文化遺産として2009年に正式に登録されています。 ワヤンとは、インドネシアの影絵人形芝居の総称で、バリでは古くから儀礼の場や 庶民の娯楽として上演されてきた伝統芸能の一つです。 人が生まれ、成長し、死んでいくまでの通過儀礼、寺院の祭礼や家や村の厄払いなど、 ことあるごとに上演され、バリ人の記憶にすり込まれた生きた芸能です。
 影絵は牛の皮を精巧に彫刻して作られた人形をスクリーンに投影して演じられます。 ダランと呼ばれる人形遣いによって物語が語られ、伴奏にはグンデル・ワヤンと呼ばれるワヤン専用の青銅製のガムラン 音楽が演奏されます。



Dalang
 ダランは、ときには百体以上の人形や小道具を一人で操り、様々な声色を駆使して人形に声を与え、歌も歌います。 さらに、古代ジャワ語やマントラにも精通し、伴奏のガムランも含めて、ワヤンの全てを司ります。 あらゆる物語と知識に精通しているダランは、バリでも特別な存在であり、人々から尊敬されています。




  影絵芝居の音楽 − グンデル・ワヤン −

Gender Tunjuk  バリのワヤンでは、グンデル・ワヤンと呼ばれる影絵芝居の専用ガムランが用いら れます。 数多いバリの青銅ガムランのなかでも、このグンデル・ワヤンは最小編成の4人で演奏されますが、 その独特で精緻な音色は、バリ島でももっとも美しいアンサンブルとして知られています。
演奏には非常に高度な技術を要するため、バリ島でも演奏できる人は多くはありません。
 ワヤンの演奏時は、ロマンティックなシーンでの透き通るような旋律から、戦闘での激しく強烈な伴奏まで、 自在に変化する曲想をつくりだします。ダランとのスリリングな駆け引きは、 まるでジャズセッションのようなダイナミックなバトルを繰り広げます。


  ワヤンの見方

スクリーン グンデル

 上の左側の写真がバリ島の影絵芝居の一般的なスクリーンです。 上の右側の写真の楽器「グンデル」4台だけの演奏形態のワヤンを「ワヤン・パルワ」といいます。
 ご覧になっていただく方法は、スクリーンの周りを自由に歩き回って構いません。 一般的にホールでの西洋音楽の観賞は静かにして観ますが、ワヤン公演では隣の人と気軽に話したり、自由に動き回って構いません。 西洋音楽をホールで観る公演とはまったく趣向が違います。 スクリーンの前で寝たければ寝ても良いですし、スクリーンの後ろで横になって観ていても構いません。
 特に、スクリーンの裏側(演奏側)ではとても凄いことが行なわれております。 影で写っていることとスクリーンの裏側でやっていることはまったく違います。 影絵芝居ですが、人形が実に綺麗に色彩されております。 影では黒しか写りませんが、スクリーンの裏側に行けば、人形の色彩が綺麗に見えますし、人形をどのように操っているのかが分ります。 ですから、どうぞ自由に動き回ってみて、スクリーンの裏側も是非覗いてみてください。 周りを歩いたら見えなくなる人がいるのではということは、気にしないでください。 人前を通ったとしても、移動でさっとしか通らないと思いますので、 気にせずに、それを含めて楽しんでいただきたいです。
 バリでは人が集まったなというところで序曲が始まります。 その序曲がワヤンの始まりの合図になり、三々五々、人が集まってきてワヤンを観始めるというようになります。 そして、ピーナッツを食べながら観ています。 日本の野球場で野球を見ているときに物売りが来るように、バリの芸能を見ていると普通に物売りが来ますので、 そこから買って、飲んだり食べたりします。 それがまた楽しみなのです。 日本ではなかなか飲食可能な公演は少ないですが、飲食可能な場合はどうぞ飲食片手に楽しんでください。
 また、ダランが面白いことを沢山言いますので、面白かったら大いに笑ってください。 バリでは観ている人が怒るとスクリーンに石を投げる人もいます。 そのように、感情を表に出してよい芸能ですので、リラックスしてみてください。


  人形・物語の見方

 一座で上演する物語はワヤン・クリッの古典の古代叙情詩マハバラタの一節です。
 スクリーンの表側(影側)から見て、左側からでてくる人形は善い人、右側からでてくる人形は悪い人です。 場面展開で逆に出てくる場合もありますが、大抵、善い人は左側から、悪い人は右側からでてきます。 スクリーンの裏側(演奏側)から見る場合は、右側からでてくる人形が善い人、左側からでてくる人形が悪い人になります。 そして悪い人が必ず負けます。 結末が分るならつまらないと思うかもしれませんが、悪い方がどのようにして負けるのか、それをみんなで楽しんで観るのがバリ島の影絵芝居です。
 最近上演しました「天女スプラバ使者に立つ」の演目ですと、インドラ神、アルジュナ、スプラバ、ニワタカワチャなど、王様や魔王などの高貴な人形は古い言葉のカウィ語でしゃべります。 バリ人も古い言葉は分りませんが、古い言葉の台詞は唄のような抑揚を持っていますので、それを楽しみます。 では、どのように言葉を理解するのかというと、家来役の人形が通訳をします。 バリではバリ語で話しますが、日本でバリ語でやってしまっては内容が分らないので、バリ語でやるところを日本語で話します。 古い言葉はそのまま使います。 バリの上演方法と全く同じです。

トゥワレンとムルダ デレムとサングト

 勝つほうの家来(影側から見ると左側からでてくる人形)はトゥワレンとムルダという名前の人形です。父親と息子の関係です。
 悪い方の家来(影側から見ると右側からでてくる人形)はデレムとサングトという名前の人形です。兄弟の関係です。 悪い方の家来は頭に毛がついています。馬の鬣です。


カヨナン  そして、ワヤンにはとても大事な人形があります。 「カヨナン」です。 葉っぱのようにみえますが、宇宙の樹で、森羅万象すべてを象徴する人形です。自然現象の全てをカヨナン一枚で表現します。 序曲が終わったあとに、一度カヨナンが打ち振られ、スクリーンの真ん中に立つちます。 それにより、ただの1枚の布のスクリーンがあらゆる森羅万象が表現できるマハバラタの物語の世界になります。 そして、登場人物たちがスクリーンにぼんやりと写しだされ、もう一度カヨナンが打ち振られると、第一幕の一話が始まります。 また、善い話から悪い話に幕が変わるときにも出てきます。 最後にも、カヨナンが真ん中にたったら物語が終わります。 このように、いろいろなかたちでカヨナンはとても重要な人形です。
 序曲から2回目目のカヨナンが打ち振られるまでは物語が始まりませんが、どのようにして後ろで準備しているのか、演奏しているのかというのも、見所です。

 是非、今までと違った芸能の見方を楽しんでいただけたらと思います。


   since 2013.6.2

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